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ベーシックインカムの有効性〜真の意義はデフレ脱却!

ベーシックインカムとは、全ての日本国民に「生活する上での最低限の資金を配る」政策です。基本的に、生まれたての子供から老人まで、収入の大小や勤労の有無などに関わらず、分け隔てなく支給されます。日本国民全員が毎月、国民年金を受け取るようなイメージです。

その代わり、年金や社会保険などの支給は、全てベーシックインカムに取って代わる・・・つまり廃止されます。無論、子供手当てなどの各種補助金も廃止です。国民に対する金銭的な支援は、全てベーシックインカムに含まれるという事です。よって、人によって有利不利は大きく分かれるでしょう。子供が多い家族などはベーシックインカムだけで生きていけるかも知れませんが、持病を抱えた単身高齢者などは厳しい政策となるでしょう。

ここでは、何処までをベーシックインカムに置き換えるのか、月幾ら支給するのがを細かく語るつもりはありません。当コラムでは、ベーシックインカムがもたらす、経済面のみにフォーカスして分析します。

まずベーシックインカムが導入されれば、生活保護や年金や失業保険などに掛かっている、莫大な運営コストを削減できます。これらの運営に携わる役所の人員は、ベーシックインカムの支給部門に統一できますから、大幅な行政のスリム化(公務員人件費の削減)が可能になります。また生活保護については、それ自体が既得権益化しており、これを解体することは、平等の観点からも非常に意義は大きいでしょう。

問題は、そのベーシックインカムの財源をどうするかです。大半の論者が誤っているのは、この財源を「税金」で賄おうとしていることです。突然ベーシックインカム導入をぶち上げた維新の会代表・橋下徹氏(※注1)も、財源を税金で賄うと言っています。しかしこれでは、単に社会保障の置き換えで、経済効果は全くありません。

実はベーシックインカムの真の意義は、社会保障の運営をスリム化する事ではありません。財源を「政府紙幣の発行」で賄うこと〜つまりカネを刷って配る事こそ、ベーシックインカムの効果です。つまり

ベーシックインカムとは、無の状態からカネを生みだす手段なのです

現在、政府が景気対策としてデフレ脱却・金融緩和を計ろうとしても、日銀(及びその裏にいる財務省)が頑なに拒んでいる状況です。デフレ脱却の最善策である「日銀がカネを刷って国債を買う」という方法が、デフレ利権に群がる財務省によって阻止されている状態なのです。

この状況を打破するのに、ベーシックインカムを使うのです。日銀がカネを刷らないなら、政府がカネを刷り、それを国民に直接支給すれば、世の中のマネーの絶対量が増えていくので、いやがおうでもインフレになります。

つまり、ベーシックインカムは「行政のスリム化の手段」としてではなく、「デフレ脱却の手段」として導入することが、経済にとっての最大の利点なのです。この事を理解すれば、ベーシックインカムの財源はどうするのか?なんてバカな議論は不要になります。

ベーシックインカムは多様な文化を育む

ベーシックインカムが導入されれば、確かに働かなくなる人たちも出てくるでしょう。しかし、そのことは社会に悪影響を与えるものではなく、むしろ社会に多様な文化をもたらすはずです。

画家や漫画家・ダンサーや舞台芸人やお笑い・音楽(アーチスト)・スポーツ選手・・・これらの世界は、頂点に立つ一部人を除けば「食べていけない職業」です。しかし、ベーシックインカムで最低限の生活費さえ賄えるのなら、薄給でもこれらの職業を続けていける人たちが増えてきます。すると、多様な文化が発展していくので、日本人は精神的に豊かになれるはずです。

日本は成熟しきった社会で、もはや高い経済成長は望めません。経済成長や技術革新は新興国に任せて、日本は彼らへ技術や資金を提供して、その見返りを受ければ良いはずです(⇒政府系ファンド)。そして国内的には、ベーシックインカムを正しく導入して、デフレ脱却と多様な文化の発展をもたらすことが、今の日本に必要なのでは?橋下氏ら政治家の方たちには、冗談ではなく、ぜひ本気で考慮してほしいと思います。

 

※注1;橋下徹氏がベーシックインカムを言いだしたのは、明らかに観測気球的な意味合いです。本人のTwitterでも「社会保障制度を考えるきっかけとして言ったまでだ」との旨があり、経済的側面などは深く考慮していないようです。

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