海外投資データバンク別館(コラム集) | ||||||||||||
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先進国と新興国(途上国)の分類の基準経済の世界では、しばしば「先進国」と「発展途上国」という言い方をします。金融の世界では、途上国は「新興国(EmargingMarket)」とも呼ばれます。新興国のETFで最も有名な「MSCIエマージングマーケット」なども、その典型です。では、先進国と新興国(発展途上国)の分類は、どのような基準で行われているのでしょうか? 実はこの分類は、発表する団体・金融機関によってまちまちで、明確な世界基準みたいなものがある訳では無いのです。例えば、金融の世界で最も有名なのが、前述のMSCI(モルガンスタンレー)と、イギリスのFTSE(フィッチ)です。両者とも、アメリカやドイツ・フランスなどの欧州各国や日本が先進国で、中国やインドなどBRICs諸国などが新興国といったように、基本的な分類は同じです。しかし、一部には先進国なのか新興国なのか、ボーダーライン際に居る国の扱いが異なっている場合もあります。例えば韓国は、MSCIでは新興国扱いですが、FTSEでは先進国に分類されています。 韓国や台湾などは、先進国なのか新興国なのか、常に各所で問題になります。個人的には、韓国や台湾は明らかに先進国とは言えないと思います。韓国や台湾には、サムスンやホンハイなど世界的大企業もありますが、国民の中間層が貧困なことが、先進国とは言えないと考える理由です。その証拠に、韓国や台湾の一人当たりGDPは2万ドル程度と、日本やアメリカの半分以下に過ぎません。 無論、一人当たりGDPだけで分類するのも、問題があります。例えば、中東のUEA(アラブ首長国連邦)やカタールは、一人当たりGDPは日本の2倍ありますが、とても先進国とは言えないでしょう。人口が少ない一方、石油や天然ガスなどの資源が豊富な事が、一人当たりGDPを押し上げている理由です。しかし、王族など一部の特権階級が莫大な富を得ている一方、多くの庶民は貧しいままです。 そもそもUAEやカタールなど中東国家の大半は、王政による独裁国家なので、庶民が権力を得る術は(それこそ革命でも起こさない限り)一切ありません。こんな自由の無い国は、とても先進国とは言えないでしょう。中国もGDPが急増していますが、選挙や言論の自由が無い限り、先進国に認められる事は無いでしょう。 また、イスラエルはMSCIの分類では先進国であり、一人当たりGDPもイタリアやスペインと同レベルです。しかし、イスラエルを先進国だと捉えている人は、ほとんどいないでしょう。人道面で問題のある国など、多くの人は先進国とは認めませんよね。 アルゼンチンは格下げされたが、中国の格上げはありえないそして(FTSEにおける韓国のように)新興国から先進国に格上げされるだけでなく、逆に降格することもありえます。例えばアルゼンチンは第二次大戦後、一時は先進国に分類されていました。しかし、80年代以降の社会の混乱、数度のデノミなどで、アルゼンチンの経済は崩壊しました。その後MSCIでは、アルゼンチンはエマージング(新興国)に分類していましたが、2009年5月にその下のフロンティアマーケット(開発途上国)に格下げしました。 このように、先進国と新興国の分類は、何を基準にするのかによって異なりますし、時が経てば分類を見直す必要にも迫られます。韓国は、このまま経済が発展して中間層の所得増えれば、多くの国際機関から先進国として認められるかもしれませんが、再び途上国に格下げされる可能性もあるでしょう。中国は国民の自由が無い現状、先進国に格上げされる可能性はゼロです。もっとも、中国政府は今後も、国際機関からの評価などよりも、独裁を続ける事を選ぶでしょうけど。 ※豆知識;ノーベル経済学賞受賞のサイモン・クズネッツは「世界には先進国・途上国・日本・アルゼンチンの4種類の国しかない」と語ったそうです。先進国と途上国の分類は基本的に固定されたままだが、先進国に成り上がった日本と、途上国に転落したアルゼンチンだけが例外だという意味です。シンガポールやイスラエルなどは、MSCIで先進国に格上げされましたが、これは実体には即していません。世界の多くの人が、イスラエルを先進国だとは思わないでしょうから。 |
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