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日銀・白川が金融緩和を行わなかった理由

民主党政権下で日銀総裁の座に就いた白川方明(しらかわ まさあき)は、歴代でも最低最悪の総裁だったとの悪評です。白川を擁護しているのは、いわゆる日銀御用学者だけで、まともな経済学者ではありません。

それが証拠に、白川はバーナンキFRB議長から「ジャンク(屑)」と言われ、ノーベル経済学賞受賞のポール・クルーグマンに至っては「銃殺すべきだ」とまで言ったほどです。また、アメリカのグローバルファイナンス誌が公開している「世界の中央銀行総裁の評価(2012年版)」では、白川は「Cマイナス」と先進国では最悪で、彼より下はアルゼンチンやエクアドルなどデフォルト寸前国家の総裁だけです(バーナンキはBで、ECBのドラギ総裁はBマイナス)。

白川がこれだけ低評価な理由は、至極明白、金融緩和を全く行わなかったからです。2008年の金融危機で、FRBが200兆円以上の量的緩和を行ったのに対し、日銀はその3分の1も行っていません。金融危機後の急激な円高の原因は、間違いなく日銀の量的緩和不足です。

では何故、白川は金融緩和を行わなかったのでしょうか?その理由の一つは、財務省の消費税増税利権です。

財務省は消費税増税が悲願であり、何が何でもこれを行いたいのです(※注1)。そのため、景気が回復して所得税や法人税などの税収が、自然に増えては困るので、財務省は日本の景気が悪い状態が続く事を望んでいるのです。消費税は不景気でもさほど税収は落ちないので、財源不足を理由に消費税増税を断行できるという寸法です。その為に、財務省は(事実上の主従関係にある)日銀に、金融緩和を禁じるよう命じていたのです。

これは日銀幹部にとっても、悪い話ではありません。金融緩和を渋っていれば、円高が進行する事は自明の理です。自分達の姿勢一つで、円高が続くという事は、日銀幹部達は(個人的にドル売り円買いを続ける事で)幾らでも私腹を肥やす事が出来ます。日銀には、景気悪化によるペナルティを全く負っていないので、このような暴挙がまかり通るのです(※注2)。

もう一つの理由は、白川自身の保身です。白川の任期は2013年4月初頭で切れます。金融緩和は短期的に見れば、長期金利の急上昇などのリスクもあるので、経済の混乱を招く恐れもあります。よって現在の白川は、残り少ない任期の間、穏便に何も起こさずに乗り切ろうという「逃げ切り」の事しか考えていないはずです。だから、大胆な金融緩和が行われず、日本の景気が低迷しているのです。

 

◆関連サイト◆
アメリカFRBの金融緩和(QE1・QE2)の内容;日銀とのバランスシート拡大の差が一目で分かる。

※注1;消費税率を上げていけば、必然的に軽減税率が必要となり、財務省が各業界団体に脅しを掛けられます(軽減税率を適用されたければ、財務官僚を天下りとして受け入れざるを得ない)。この天下り利権こそが、消費税増税利権の根源です。
※注2;アメリカの中央銀行=FRBは、インフレ率以外にも失業率にも目標を立て、その責任を負っている為、日銀のような幹部の横暴は起きません。

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